概 要

自動車産業にとって快適で安全で低燃費で効率的な自動車の開発は焦眉の課題です。他方で、自動車には人間社会や自然環境との地球規模での共生が問われています。このように複合的で多元的な課題を克服するためには、自動車を科学(サイエンス)の対象として捉え直し、理工学を始めとする自然科学のみならず、人文・社会科学からも科学的な知を動員し、それらを統合して新たな知を創造することが必要とされます。

オートモーティブサイエンス専攻はそのためのわが国初の知の拠点であり、これほど総合的で体系化されたオートモーティブ大学院は世界的にも例を見ません。自動車大国たるわが国に待望久しかった初の本格的な自動車大学院です。

オートモーティブサイエンスを構成する5つの領域

オートモーティブサイエンス専攻は、以下の5つの領域で知の追究を行うとともに、専攻全体では主専攻・副専攻制度、プロジェクト型演習、インターンシップ、国際コミュニケーション演習等を通して知の再編と統合を図り、新しい知の創造と人材の育成を展開します。

先端材料科学分野
次世代の自動車に求められる各種先端材料(鋼材、高分子材、セラミック、半導体等)の究明とともに、燃料電池、リチウムイオン電池の開発を目指します。
ダイナミクス分野
次世代エンジンの動力学特性の解明と開発、空力特性に優れた信頼性の高い車体の構造の究明を目指します。
情報制御学分野
車載センサや制御システムの開発、組込みハードウェアやソフトウェアの開発、ITSなど先端的な自動車情報計測制御の研究と開発を目指します。
人間科学分野
快適、安全な次世代自動車デザインの開発、車とヒトの交通心理学や安全文化論の探究、さらに交通流の工学的解明を目指します。
社会科学分野
産業の政策や法規、交通やエコロジーの経済などマクロな課題と、戦略経営、イノベーションや生産のマネジメントなど技術経営の解明を目指します。

出口をオートモーティブに特化した新しい大学院教育

わが国を代表する産業である自動車産業はもとより、自動車を取り巻く産官学のさまざまな分野において有為な人材を送り出すべく、オートモーティブサイエンス専攻では出口をオートモーティブに特化し、以下のような特色を備えた新しい大学院教育に取り組みます。

①主専攻、副専攻制度
主専攻と隣接の副専攻分野を学ぶことによって、高度な専門性を実践の場で活かす弾力的な思考と洞察力を育成します。
②産官学からなる教授陣
九州大学のみならず、経済産業省、トヨタ自動車や日産自動車などの自動車産業分野、そして神戸大学、福岡女子大学、西南学院大学、福岡大学などの自動車研究のエキスパートで教授陣を構成しています。
③実践志向の新しい教育
次世代自動車の開発や快適で安全で効率的な自動車をめぐる課題に焦点をあてて、実践型の演習や講義を行います。
④長期のインターンシップ
インターンシップの派遣実績
自動車産業の場で専門性を磨き、研究テーマを掘り下げるべく、自動車メーカ等で3か月のインターンシップを実施します。
⑤グローバル化を見据えた人材育成
合同研究発表の場である国際コミュニケーション演習では、英語によるプレゼンテーションとディスカッションが繰り広げられ、英語によるコミュニケーション能力を育成します。

オートモーティブサイエンス専攻への入学を期待する人材は、理系のみならず、文系も含めた多様な専門と背景を持つ人材です。そのため指導教員は、学生ひとりひとりの出身分野や関心領域に応じて、きめ細かい履修指導を行います。

修士課程、博士後期課程でどのように学ぶかに依存しますが、本専攻の修了生はオートモーティブを中心に幅広い分野で活躍することが期待されています。具体的には、自動車産業の研究開発部門の研究者、生産技術分野のエンジニア、技術経営分野のマネージャ、大学や各種研究機関の研究者などです。